開発ストーリー

                    

                    ①日よけそのものにこもる熱を抑えるヒント                    

                    ②意外な結果を生んだ「4畳半実験」                     

                    ③メンテナンスが容易で、しかもサステナブル

                    ④エアリーシェードの未来型とは

 

エアリーシェードにはたくさんの隙間があり、完全に日光を遮るわけではありません。それなのになぜ心地よく感じられるのか。その答えは、地面の表面温度を下げること、日よけそのものが熱くならないこと、そして風通しがよく熱がこもらないことなど、様々な「暑く感じる要素」を掘り下げ、それをクリアしてきたことにあります。

そんなエアリーシェードを生み出す原点となった、京都大学の酒井教授の研究と努力、成果をインタビューを通して、本製品の特長をより詳しくご紹介します。

京都大学大学院 酒井 敏 教授


①日よけによって地面の表面温度を下げ、日よけそのものにこもる熱を抑えるヒント

かねてから酒井教授は、ヒートアイランドの対策として「気温を下げる」のではなく「都市の表面温度を下げる」ことが重要だと考えていました。さまざまな観測結果によって、木々が生い茂る森の表面温度は、都市部のそれよりも明らかに低いことがわかっています。

「気温を上げる要素のひとつに太陽光がもたらす熱があります。家屋やビルの日射反射率をアップさせれば温度の上昇を抑えられます。でも、森は日光を反射しません。むしろ吸収しているはずなのに涼しい。よく、植物の蒸散作用が影響して温度が低く保たれているという説を耳にしますが、植物の専門家によれば、水は植物にとって貴重なもの。周囲の温度を大幅に下げるほど無制限に蒸散はしないそうです。
つまり日射を受ける木の葉の一つひとつが小さく、大気への熱伝達効率が大きいこと。そして、小さな木の葉が3次元空間の中で適度な間隔をあけながら折り重なって、風が通り抜けること。これらが表面温度を下げる効果につながっているんです。」

この樹木の葉の重なりを人工的に作れないものか。そんな発想から辿りついたのが、代表的なフラクタル図形であるシェルピンスキー四面体でした。

「日よけを構成するピースの一つひとつを小さくしてフラクタル的に配置すれば、森と同じような環境が作り出せると考えました。私の専門分野は海洋物理ですが、水の流れと大気の流れには共通点があります。空気の乱流はフラクタル図形との相性もよいのではないかと直感的に思ったのです。」

 


②意外な結果を生んだ「4畳半実験」、日よけの下はデータ以上に快適な空間でした

この大発見ともいえる閃きを経て、酒井教授はさらに研究を加速させます。しかし、小さなものは熱くならないという物理法則はいわば常識のひとつ。ヒートアイランドの研究においては画期的な視点だったとしても、理論自体はすでに教科書に載っていて、必ずしも新しい発見ではありません。また、フラクタル構造が放熱効率に優れているという点も、それを実証するデータは不十分でした。最適な答えを導き出すためには、大規模な検証を繰り返し行う必要があります。いずれも机上での実証は困難とわかり、いきなり研究費の確保という壁に突き当たりました。

「そこで、考えたのが『まずは試作品を作ってしまえ』でした。フラクタル日よけのプロトタイプを大学構内に作り上げ、その効果を実際に体感する実験を行ったのです。
体感するには日よけの下で昼寝をしてみたい。そのためには4畳半くらいいる。でもコストをかけられませんから、作業は専門業者に依頼することなく、アルバイト募集で集った学生たち。素材や道具のほとんどをホームセンターで調達し、夏休みの期間を利用した人海戦術がスタートしました。」

 

突貫作業でできあがったフラクタル日よけと比較用のトタン屋根。それらをサーモグラフィーで観測すると、表面温度の違いは歴然としていました。しかも、思いがけない収穫として現れたのが「気持ちよさ」でした。

「暑さを和らげてくれるであろうことは期待していましたが、ごちゃごちゃしたシェルピンスキー四面体の下で人は落ち着かないのではないか、気分が損なわれるのではないかと不安でした。ところが、これが意外なことに快適だったんです。とても表現が難しいのですが、トタン屋根に比べて開放感があり、すがすがしさや爽やかさが感じられました。実用面で『気持ちよさ』が得られたのは大きな意義です。この実験で私は、あれこれと考えるより、さっさと実用化を進めたほうが早いと気づきました。」

 

 


③メンテナンスが容易で、しかもサステナブル
積水インテグレーテッドリサーチとの協働がスタート

この実験結果を出展・発表したのが、2007年に開催された大学の見本市「イノベーションジャパン」です。反響は予想をはるかに上回り、ブースは多くの人でにぎわいました。都市の表面温度を下げることにフラクタル図形を活用するという画期的なアプローチが注目を浴び、訪れた企業関係者からも賞賛の声があがりました。

「しかし、いざ製造となると、企業の皆さんからは技術的に難しいという答えが返ってきます。それに対して挙手してくれたのが積水インテグレーテッドリサーチでした。
私が所属する京都大学には、古き良き慣習として『おもしろいことをやれ』という研究姿勢が息づいています。効率重視で王道をゆく『真ん中』ではなく、あえて『端っこ』を歩く勇気です。そんな中、とうとう『できる』と言ってくれる人が現れたんです。積水化学のAさんです。このときほど嬉しいことはありませんでしたよ。
その後、いくつかの実証実験を経ながら、さまざまな改良が加えられ、ついに製品化の実現にいたりました。」

 



④酒井教授が考えるエアリーシェードの未来型とは

公園や学校といった公共施設をはじめ、さまざまな場面で導入されているエアリーシェードですが、その可能性は無限大だと酒井教授は語ります。

「フラクタル日よけの持ち味は、暑さをしのげるだけでなく、人が心地よいと感じる空間を人工的に作り上げられるところです。広場や高速道路のパーキングエリアなど、強い日射しが降り注ぎ、地面に照りつける光で輻射熱が生み出されてしまうような場所、とりわけ人が集う憩いのスペースにはぴったりだといえるでしょう。」

 

エアリーシェードは頭上からの陽光を和らげますが、雨を通します。樹木を植えられないビルの屋上はもちろん、芝生や草花で緑化された屋外スペースとの相性もよく、植物の生育を妨げないという利点があります。

「現在、私たちはさらなる実験に取り組んでいます。例えば、床に保水性のあるブロックやタイルを敷くことで、森と同じような環境を再現できるのではないかと考えています。日本工業大学の広大なコンクリートの施設で行なっている実験でもエアリーシェードの下に保水ブロックを置いているのですが、表面温度を低く一定に保ちながら風が通り抜けるためか、雨水だけでブロック表面に苔がむすようになりました。
こうした植物の成長を促す効果は、もしかしたら『砂漠の緑化』に貢献できるかもしれません。日射しにさらされる場所に都会のオアシスを提供するエアリーシェードが、いずれは真のオアシスを作りあげる手助けになるかもしれないのです。」

 

そのためには、できるだけたくさんの場所にエアリーシェードが設置され、数値では表わしにくい「気持ちよさ」を体感してくれる人が一人でも多く増えて欲しいと、酒井教授は語ります。あくなき挑戦はこれからも続きます。

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